エブリシング・フロウズ   

津村記久子著『エブリシング・フロウズ』を読む。

今、好きな作家を何人か挙げろと言われたら、津村記久子は外せないと思う。
1人だけ、と言われたら外す気がするが(外すんかい!)、国内10人なら入る。
あとは誰と誰だよって話だが、それはまだ考えていない。
考えていないけれど、他の誰とも似ていない、唯一無二な感じのメンバーになると思う。
津村さんもまさにそんな感じの作家だ。

今回も本当に面白かった。
明るい話ではない。
中盤以降は、わりと大きな「事件的なもの」に集約されて話が進むけれど、前半は、どうということのないエピソードの羅列に思えたりする。
が、面白い。

主人公の中3のヒロシは、今年の春に読んだ『ウエストウイング』に出てくる、絵の上手な、でもなんだか屈折している魅力的な小学生のあのヒロシだった。
それに気づいた瞬間、妙に、わっ!となった。
憎いぜ津村さん!とも思った。

中3のヒロシは、絵を描くこととも距離を置く、数学が苦手なうだつの上がらない受験生だ。
イケてるグループには当然属さず、出席番号が近い、ミステリアスで孤高の矢澤(ヒロシは山田だ)とちょっと親しい。
気になる女子はいる。
ちょっと変わった女子。
母親はうっとうしく、塾はめんどくさい。
が、ヒロシは頭脳は明晰だ。
クールで達観もしていて、でも幼い。
要するに、まっとうで生きづらいタイプ。
そして10代ど真ん中だ。

受験の悩み、いじめ、虐待などもけっこう逃げずに書かれているが、だからといって、そういうものが前面に出た小説という印象はなく、ヤングアダルトというよりは、バリバリ大人向けの小説に思える。

日々の雑事がだらだらと時系列に沿って描かれているかと思えば、その中に不意に、瑞々しくて本質的な場面やセリフが登場したり、予定調和でない、現実のままならなさややるせなさが、だからこそグイグイ迫ってきたりする。
傾向と対策を練りづらい、一筋縄どころか、縄をすり抜けてしまいそうな登場人物たちが、ゴールなど目指さす生きている、そのこと自体が尊い、そう思わせる世界だ。
私にとっては稀有な世界。

やっぱり津村記久子はいい。
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by kuni19530806 | 2014-09-19 20:55 | 読書

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