さようなら、オレンジ   アイ ラブ ヌーヨーク   

岩城けい著『さようなら、オレンジ』を読む。

初めて読む作家です。
これがデビュー作。
太宰治賞受賞作だそうですが、太宰治賞というのがどういう賞なのかはわかりません。

なんだかすごくよかったです、この小説。
a0099446_7293513.jpg

大々的に明記されてはいませんが、舞台はオーストラリア。
アフリカから難民として夫と子ども2人とやってきたサリマがヒロインです。
彼女はスーパーマーケットの肉の加工場に職を得、日々、血のにおいを身体にまといながら働きます。
夫には去られますが、仕事の腕を磨き、職業訓練校の語学クラスで新しい国の言葉を学び始めます。

そこで知り合ったのが日本女性。
サリマは、髪の質を見て彼女に「ハリネズミ」という名前をつけます。

ハリネズミは夫の転勤で「学ぶ」という自分の夢を諦め、かたや夢を引き続き遂行中の夫に複雑な思いを抱きつつ、子育てをしながらサリマと同じクラスに通います。
サリマとハリネズミのオーストラリアでの生活が「言葉」というものをベースに描かれます。

母国を離れ、母国語が通じない土地で生活をするという経験は、人間を丸裸にするものなのかもしれません。
自分にはその経験がなく、今のところはその予定もありませんが、ならばそういう状況が他人事、絵空事に映ったかというと、そうでは全くありませんでした。

心細さ、不安、諦めや開き直りという、異国で生きる際にもれなくついて回るであろう感情だけでなく、人間としての尊厳、生きることの意味などという根源的な命題をもガツンと自分の目の前に提示された気がしました。
サリマは弱く無知で愚かでしたが、どんどん、強く賢く優しく、そしてたぶん美しく、なります。
それは変貌したというより、目覚めた、生き始めた、という方がしっくりきます。

サリマ、そしてハリネズミの周囲の人が生き生きと魅力的に描かれています。
特に、サリマの後見人的ポジションを自認する、同じクラスのイタリア系のオリーブの、前半と後半でのイメージの違いは、違うからこそ、リアルで生々しいです。
サリマの職場の監督や、ハリネズミのアパートのトラッキーもとても魅力的。

でもなぜか2人の夫だけは、魅力なし。
深みが全く感じられず、存在感が薄いです。
まるで、異国では頼りにならないわかってない配偶者がいる方が人を成長させる、と暗示してるよな?

この小説を読んだら、最近読んだアキエダユミさんの『アイ♥ヌーヨーク』というノンフィクションを思い出しました。
a0099446_7301653.jpg

どちらも、女性が母国を離れ、新しい国で生活しようとする姿が描かれています。
どちらも、最初はパートナーがいますが、途中でいなくなります。
どちらも、そこで関わった人達に自力だけでは開かない扉を開けてもらうところが作品の肝だったりします。

異国で暮らす、かあ。
[PR]

by kuni19530806 | 2014-09-14 23:28 | 読書

<< エブリシング・フロウズ 女のいない男たち >>