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直近の気持ち   

重篤な病気で、余命も長くないと宣告されている浦和在住の父親の有料老人ホーム入所が決まった。

当初、介護保険(要支援1)の範囲でのショートステイを考えていたのだけれど、この範囲だとひと月の間に2泊3日を2回しか使えず、それ以上は自己負担であることが判明した。
父親は厚生年金受給者で所得税を納めているわけだが、それだと介護保険外の自己負担額もかなり高い額になってしまうことも同時に判明した。

そんなわけで、寝たきりや認知症の症状はないものの、本人曰く「日々刻々と日常生活が億劫になっている」今の状況では、点滴に繋がれる生活でただ死を待つ入院生活を選ぶか、どのぐらいの期間になるか、もしかしたらほんのひとときかもしれないものの最低限動けるうちは食事や洗濯や通院などで人の手を借りつつも自立した生活を選ぶか、の選択を迫られ、後者(=有料老人ホーム入所)を選んだわけだ。

2012年の4月に老人福祉法が改正され、「有料老人ホームの設置者は、家賃・敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない」とされたことも、父親の老人ホーム入所の後押しをした。
要するに、月々に收める決まった費用以外の入居金をとることはまかりならんということ。

この改正は3年間の猶予期間があるということだが、早速これに対応し入居金を無料にした某ホームへ、ショートステイの連続使用の夢破れた(?)父親が食いつき、問い合わせをし、見学に行き、入所が決まったという次第。
その間、2日。
こっちにはほぼ事後承諾。
つい先日、私は文頭のショートステイの契約のために浦和に行き、ケアマネージャーさんと、ショートステイでお世話になる予定の近隣の支援ホームの方に来ていただき、支援ホームと契約した。
契約後は準備のために役所やかかりつけ医や近所のスーパーを回った。
・・徒労。
まあいいけど。


有料老人ホームへの入居自体は賛成だ。
ショートステイの連続使用にはいろんな意味で無理があると私も思ったし、入居金をとらないことで月々の費用が上乗せになっているかもしれないとはいえ、このたびの某ホームが父親に提示した金額は父親が自力で出せる範囲だったので私が文句を言う筋合いではない。

事後承諾に関しても、「部屋の空きがほとんどなく、あまりお待ちできません」と言われれば、たとえそれが有料老人ホームのセールストークの常套だとしても、周囲になんだかんだ言われる前に契約してしまおう自分のお金で行くのだし、と父親が思った気持ちもわからないではない。
炎天下に役所やスーパーを回った労力がムダになったことにムッとしているわけでもない。
でも・・。
なんかモヤモヤした数日を過ごした。
そんななか今日、ケアマネージャーさんの所属する訪問介護の会社に急遽事情が変わったことに対してお詫びに行き、そこでいろんな話をした。

ケアマネージャーさん(50代女性)には既に、私が15才のときに両親は離婚して父親とは数十年音信不通だったこと、母親からは離婚前も後もずっと父親の悪口を聞かされ続けてきたこと、長兄が元気に生きていれば自分は父親の面倒を見るつもりなど全くなかったこと、などを話していたが、今日しみじみ彼女に「この数ヶ月、マツモトさんは本当に良くやってらっしゃいましたよね。会社でも評判でしたよ。私が同じ立場だったらできなかったと思う」と言われて驚いた。
私が「だってしょうがないじゃないですか。肉親の情なんかじゃありませんよ。義務感で動いてます」と言うと、「あははっ、義務感(笑)。でも両親が離婚して連絡を取り合っていない子どもさんはそういう事態になっても『関係ありません』とおっしゃる方が多いですよ」とのこと。

そうなの?
知らんかったー。
ホント、知らんかったよ。

私が「むしろ、義務感が露骨過ぎて冷酷な娘に見えるだろうなあと気になるくらいだった」と苦笑すると、「最初、実のお父さんなのにどうしてですます調で話すのかなあと思ったりしましたけど。実は私も離婚してまして、将来、自分の娘がマツモトさんと同じ立場になったら娘はどうするんだろうと考えさせられました」と苦笑で返された。
そうか。
確かに、自分以外に当てはめてみると、離婚して母親との生活を選んだ子どもが何十年も経って父親の病気を知ったから面倒を見る筋合いなんてねーよなあとあらためて思ったりもした。
アタシ、何に対して頑張ってたんだろう。
道義心?

父親には今日、初めて面と向かって謝罪された。
なんだかごちゃごちゃと言っていたが、要するに「自分は父親のすべきことを途中で放棄したのにこの期の及んでこんなに世話になって申し訳ない」みたいな。

父親に謝罪されたからではなく、ケアマネージャーさんと話してなんだかちょっと遮眼帯がとれたみたいでモヤモヤが晴れた。
そして気づいたのは、私は、長兄が生きていればやっていたであろうことを引き継いでいるのだなあ、ということ。
私の「人として、肉親としてやるべきこと」というベクトルは、父親に向けてではなく、今は亡き、世渡り下手で貧乏くじをひきがちで愚痴も多く面倒くさい人間だった兄に向けてなのだと気づいた。

これからも、父に対して不満を抱いたり口にしたり(文字にしたり)することは多々あると思うが、とりあえずモヤモヤはもうしない気がする。

そんな気持ちです、今は。

by kuni19530806 | 2012-07-18 20:52 | その他

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