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キルトの家   

NHK土曜ドラマ「キルトの家」前後編を見た。
その昔、「男たちの旅路」にKOされた身としては、同じ脚本家、しかも同じ土曜ドラマ枠、見ずにはいられよーか、というものです。

「男たちの旅路」は鶴田浩二、桃井かおりがメインキャストで、数年間、年に1~2度、3話ずつぐらい放映されたと記憶していますが、当時十代の私には本当にインパクトのあるドラマでした。
鶴田浩二と桃井かおりの大ファンになったし(ただしドラマの役柄に限定のファン)、放映日の土曜の夜は数時間前から気持ちはもう男たちの旅路モードで、全員集合もうわの空で見ていた気がします・・たぶん。

桃井かおり扮する悦子が死に、岸本加世子や清水健太郎(6回逮捕で現在服役中←ユリオカさん情報)がレギュラーになる頃はあまり真剣に見なくなりましたが、それでもあのドラマの鶴田浩二は、当時のお茶の間向けのドラマの規定枠外のキャラクターとして一貫して新鮮であり続け、それまでは彼に対して「なつかしの歌番組にたまに出てくる、ハンカチでマイクをくるんで耳に手をあてて歌う怖そうでめんどくさそうなオジサン」という印象しかなかった私には、初めて「経験値の高い大人の男の渋さ」を感じさせてくれた存在でした。
あ、最後のフレーズはなんか予定調和な文章、まあいいか。

「男たちの旅路」の中で印象的な回は、桃井かおりの最後の回と、やはりあのシルバーシートです。
そして、今回の「キルトの家」はちょっとシルバーシートを彷彿させるドラマでした。

もはや語り尽くされている感がありますが、あらためて思います、シルバーシートは凄かったなあと。
志村喬、笠智衆、加藤嘉、藤原釜足、殿山泰司が勢ぞろい。
この5人が晩年(人によっては最晩年)、同じドラマに出るだけでも驚くべきことなのに、こぞって淋しい老人を演じ、一緒にバスを乗っ取るというストーリーでした。
でもそれがいかに凄い人選、役柄、内容かがわかるのは、下手すりゃ私がギリギリの世代かもしれません。

なぜか当時、我が家には殿山泰司の三文役者ナンチャラというエッセイがあって、それは今で言う「ちょっとエロい」内容で、子ども心に、殿山泰司はロクでもないジジイという刷り込みがされていましたが、シルバーシートを見て「ロクでもないわけじゃないかも」と思ったりしました。

なかなか「キルトの家」に話が進まん!
っていうか、正直、もう「キルトの家」の話はどうでもよくなってきました。

実は、ちょっと期待外れだったりしたのです、キルト。
そりゃあ、腐っても山田太一ですから、問題提起になる設定だし、印象的なセリフはいっぱいありました。
キャスティングも渋かったっす。
特に、あの緑魔子に謁見できるとは!

ナレーションもなく、唐突なセリフや行動で視聴者をちょっと困惑させ、でも後々その理由が解明されていく進行は、わかりやすさに慣れた身には一見新鮮で「これぞドラマ!」ですが、その解明方法が全部出演者、それも本人のセリフによる説明ってのがなあ。
山崎努の「魂の話をしよう」というセリフの意図も、松坂慶子が高齢者の世話に翻弄する意味も、杏と三浦貴大の過去も、「実はこういうことがあった。だから・・この気持ち、わかるでしょ」と涙ながらに語られると、その内容には共感を覚えても興ざめしてしまう。
若い二人には山田太一独特の言い回しもしっくりこなかった。
リアリティがドラマの全てではないと思うけれど、今、あんなしゃべりをする若い人はいないと思うし、それが気になり出すと、演じ手達が脚本家の駒に見えてしまって。

でも、ここまで文句を書いたくせに、見てよかったと思っている自分もいます。
山田太一のドラマはいつも「生きてくことのみっともなさと尊さ」を描いているなあと思っていますが、それが今回も強く感じられたから。
みんなみっともないんだから自分もみっともなくてもいいんだ、と思えたというか。

それにしても
山田太一自身も立派な高齢者なのねえ、もう。

by kuni19530806 | 2012-02-04 23:34 | テレビ

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