小さいおうち
2010年 09月 09日
ようやくギプスがとれました(^o^)
包帯のみになりました。
近々、またレントゲンで骨の付き具合をチェックをしますが、とりあえずギプスシーネとはお別れ・・のはずです。
私の足の形状に沿った特注(あたりまえ)ギプスシーネは、痛みがあったらまた装着するようにともらい受けてきました。
もう出番が来ないことを祈るのみですが、外したら外したで、実はとても心許ないです。
今までガードしてくれていた騎士(ナイト)がいなくなって心細くなった姫の心境です(喩えがバカ過ぎる!)。
中島京子『小さいおうち』を読む。
ここ数年、私の一推し作家だった中島さん、直木賞を獲りましたね。
その受賞作です。
直木賞の候補になっていることも知らず、受賞ちょっと前に居住区の図書館の予約の列に並びましたが、その時点での予約の順番は確か20番ぐらいでした。
中島京子さんにしては多いなあと思いましたが、今思えば、候補作になってたからですね。
候補作を片っ端から予約する人ってけっこういそう。
あまりオトモダチになりたいタイプではないけど。
ちなみに、今HPを見たら居住区の「小さいおうち」の前に並んでいる人の数は345人でした。
これは直木賞受賞作の数ヶ月後としては特に多くはない気がしますが、ちょっと前までは「中島京子」と言ってもあまり知っている人がいなくて、いろんな場所で折に触れ口角泡を飛ばしてその素晴らしさを力説したもんで(ちょっとウソ)。
これからは特にそんな必要もなくなるかと思うと淋しい。
なくならないかあ。
直木賞受賞っつったって、そのときは知名度は上がるものの、一過性ですからね。
その証拠に、本と距離の近い仕事をしているくせに、去年の直木賞受賞作家だって覚えちゃいないし、今までのものもほとんど読んでません、私。
『小さいおうち』は、昭和初期、小学校を卒業するとすぐに山形から女中奉公として東京に出てたタキの回想録がメインの物語です。
タキは、平井家という、当時の中流の上ぐらいのサラリーマン家庭の女中になります。
平井家には、穏やかで優しくて生臭さ皆無のご主人と、若くて奇麗な時子奥様、人懐こくて可愛い恭一ぼっちゃんがいて、タキは2畳ながらご不浄付きの個室も与えられ、平和で充実した女中生活を送ります。
戦争と、ある人物が平井家をじわじわと侵犯するまでは。
相変わらず、構成の妙がたまりません。
中島さんの構成力は以前から際立っていると思っていましたが、この作品もさすが。
回想録と、それを執筆する米寿のタキと回想録の唯一の読者である甥の息子の健史とのやりとり、そして意表をつく最終章の配置や配分、が絶妙です。
この構図が決まった時点でこの小説の成功は約束されたようなもの・・と一介の読者が後出しジャンケンのように今更言う必要もないか。
この小説のラストは、いわばオープンエンドだと思います。
衝撃を受ける人も多いでしょうが、この「そうだったのか!」によって、今まで咀嚼してきたつもりのタキの回想録の真偽が曖昧に思えてくる点が多々あるし、そうとなれば、いろんなことがいろんな風に解釈可能になります。
そもそも、読み手の数だけ物語世界があるように、ひとつの事象でも、書き手の数だけその解釈があるわけですからね・・というあたりまえの事実に気づいたり。
とにかく、この物語は、しばし呆然、とか、混乱した、という読後感を持つ人も多いかも。
残りページ数に比例してそれなりに方向が見えてきていたつもりだった読み手におけるこの物語の落としどころみたいなものが、最後になって「幻想でした」と言われたようなもんですからねー。
最後にあらためて、パラレルワールドにほうり出される、みたいな。
なんだか理屈っぽい感想になってしまいましたが、中島京子さんの小説を読むたびに感じる「間口の奥はブラックホール」的なイメージが今回も健在でした。
傑作、だと思います。
これを読んだら、小金井公園の江戸東京たてもの園に行きたくなりました!
包帯のみになりました。
近々、またレントゲンで骨の付き具合をチェックをしますが、とりあえずギプスシーネとはお別れ・・のはずです。
私の足の形状に沿った特注(あたりまえ)ギプスシーネは、痛みがあったらまた装着するようにともらい受けてきました。
もう出番が来ないことを祈るのみですが、外したら外したで、実はとても心許ないです。
今までガードしてくれていた騎士(ナイト)がいなくなって心細くなった姫の心境です(喩えがバカ過ぎる!)。
中島京子『小さいおうち』を読む。
ここ数年、私の一推し作家だった中島さん、直木賞を獲りましたね。
その受賞作です。
直木賞の候補になっていることも知らず、受賞ちょっと前に居住区の図書館の予約の列に並びましたが、その時点での予約の順番は確か20番ぐらいでした。
中島京子さんにしては多いなあと思いましたが、今思えば、候補作になってたからですね。
候補作を片っ端から予約する人ってけっこういそう。
あまりオトモダチになりたいタイプではないけど。
ちなみに、今HPを見たら居住区の「小さいおうち」の前に並んでいる人の数は345人でした。
これは直木賞受賞作の数ヶ月後としては特に多くはない気がしますが、ちょっと前までは「中島京子」と言ってもあまり知っている人がいなくて、いろんな場所で折に触れ口角泡を飛ばしてその素晴らしさを力説したもんで(ちょっとウソ)。
これからは特にそんな必要もなくなるかと思うと淋しい。
なくならないかあ。
直木賞受賞っつったって、そのときは知名度は上がるものの、一過性ですからね。
その証拠に、本と距離の近い仕事をしているくせに、去年の直木賞受賞作家だって覚えちゃいないし、今までのものもほとんど読んでません、私。
『小さいおうち』は、昭和初期、小学校を卒業するとすぐに山形から女中奉公として東京に出てたタキの回想録がメインの物語です。
タキは、平井家という、当時の中流の上ぐらいのサラリーマン家庭の女中になります。
平井家には、穏やかで優しくて生臭さ皆無のご主人と、若くて奇麗な時子奥様、人懐こくて可愛い恭一ぼっちゃんがいて、タキは2畳ながらご不浄付きの個室も与えられ、平和で充実した女中生活を送ります。
戦争と、ある人物が平井家をじわじわと侵犯するまでは。
相変わらず、構成の妙がたまりません。
中島さんの構成力は以前から際立っていると思っていましたが、この作品もさすが。
回想録と、それを執筆する米寿のタキと回想録の唯一の読者である甥の息子の健史とのやりとり、そして意表をつく最終章の配置や配分、が絶妙です。
この構図が決まった時点でこの小説の成功は約束されたようなもの・・と一介の読者が後出しジャンケンのように今更言う必要もないか。
この小説のラストは、いわばオープンエンドだと思います。
衝撃を受ける人も多いでしょうが、この「そうだったのか!」によって、今まで咀嚼してきたつもりのタキの回想録の真偽が曖昧に思えてくる点が多々あるし、そうとなれば、いろんなことがいろんな風に解釈可能になります。
そもそも、読み手の数だけ物語世界があるように、ひとつの事象でも、書き手の数だけその解釈があるわけですからね・・というあたりまえの事実に気づいたり。
とにかく、この物語は、しばし呆然、とか、混乱した、という読後感を持つ人も多いかも。
残りページ数に比例してそれなりに方向が見えてきていたつもりだった読み手におけるこの物語の落としどころみたいなものが、最後になって「幻想でした」と言われたようなもんですからねー。
最後にあらためて、パラレルワールドにほうり出される、みたいな。
なんだか理屈っぽい感想になってしまいましたが、中島京子さんの小説を読むたびに感じる「間口の奥はブラックホール」的なイメージが今回も健在でした。
傑作、だと思います。
これを読んだら、小金井公園の江戸東京たてもの園に行きたくなりました!
by kuni19530806 | 2010-09-09 23:34 | 読書