チャイルド44
2010年 02月 12日
遅ればせながら、トム・ロブ・スミスの『チャイルド44』(上下)を読む。
実は、昨日の文京シビックホールの往復の電車の記憶がほとんどありません。
この本の佳境だったので。
よく、間違わず、乗り越しせずに行って来れた(ら抜き)もんです。
2008年の「このミス」の海外編1位です。
このミス離れも著しい昨今、それは全く知りませんでした。
ある日ふと「そういえば最近、ずっしりした海外ミステリを読んでないなあ」という<読み応えのある翻訳ミステリ飢え>を感じ、お知り合いのレオさんのこの本への推薦の弁に惹かれ、手にとってみました。
スターリンの圧政下の1950年代のソ連が舞台です。
KGBの前身である国家保安省の捜査官レオ(レオさん、奇遇ですよね!)が主人公。
レオはエリート中のエリート。
ちなみに、当時のソ連のエリートの必須条件は能力、理想を体現する見てくれの良さ、そしてなにより揺るぎない国家への忠誠心です。
それは、善悪の概念や人間としての良心とは別・・どころか、たいていの場合、まるで真逆な、残酷で非道な選択や行動を、国家のためとあらばなんの迷いもなくとれること、を指します。
レオは一見全ての面で盤石なエリートでしたが、狡猾で希代の悪役キャラの部下ワシーリーと捜査の過程で激しく衝突し、それを機に彼の謀略にはまり、直接的には妻をスパイとして摘発しなかった罪で、妻と共に辺鄙な町の民警に飛ばされます。
そして彼はその町で、妻の本音と向き合うことになると同時に、理想の社会主義国家では起こり得ないとされる連続殺人事件の存在に気づきます。
凄い小説です、これ。
イギリスの29才の作家の処女作だそうですが、この全編ひりひりするような、いっときもダレない緊張感がなにより凄いです。
特にしょっぱな。
この小説は1933年の、劣悪な環境と圧倒的飢えに苦しむウクライナから始まるのですが、その章の緊張感たるや。
そこでガツンとやられちゃいます。
小説に癒やしを求める人はそこで百%退散するしかない。
その後に続く1953年の描写も99%は闇です。
一縷の、まさに1%のなにかに向かって物語は進むわけですが。
小説のリアリティって、史実に忠実だとか描写が正確とか登場人物の行動や心理にシンパシー、もしくは説得力がある、なんてことでは全然ないんですね。
もっと、なんていうか、書き手の真剣さというか、姿勢のリアルさにかかっている気がします、私にとっては。
ウエットで抽象的な言い草ですけどね。
それにしても、国って組織は怖いです。
1950年代のソ連に限ったことではもちろんありません。
人は、後ろ盾が大きければ大きいほど自らの思考を止めて残酷になるものですが、宇宙戦争でも勃発して地球防衛軍でも組織しない限り、いつまで経っても人心をこぞって間違わせるという意味では国がその最たるものってことなのでしょうか。
時代や思想に関係なく。
スターリンなんて昔は、その容貌で「岡田真澄に似てる」ぐらいの認識しかなかったわけですが、社会主義の理想国家はかくあるべし、という国家の威信のためにはここまで暴走するものなんだあと、今更ながら震撼しました。
スターリンのいる国や組織は今でもそこここにあるのだろうなあと思うと、まさにブルッと震えます。
後半、特に列車のシーンや犯人との対決の場面も読ませます。
読後、ちょっと疲れましたが。
つけたし。
この小説は恋愛小説でも、家族小説でもあります。
続編が出てます。
読もうっと。
実は、昨日の文京シビックホールの往復の電車の記憶がほとんどありません。
この本の佳境だったので。
よく、間違わず、乗り越しせずに行って来れた(ら抜き)もんです。
2008年の「このミス」の海外編1位です。
このミス離れも著しい昨今、それは全く知りませんでした。
ある日ふと「そういえば最近、ずっしりした海外ミステリを読んでないなあ」という<読み応えのある翻訳ミステリ飢え>を感じ、お知り合いのレオさんのこの本への推薦の弁に惹かれ、手にとってみました。
スターリンの圧政下の1950年代のソ連が舞台です。
KGBの前身である国家保安省の捜査官レオ(レオさん、奇遇ですよね!)が主人公。
レオはエリート中のエリート。
ちなみに、当時のソ連のエリートの必須条件は能力、理想を体現する見てくれの良さ、そしてなにより揺るぎない国家への忠誠心です。
それは、善悪の概念や人間としての良心とは別・・どころか、たいていの場合、まるで真逆な、残酷で非道な選択や行動を、国家のためとあらばなんの迷いもなくとれること、を指します。
レオは一見全ての面で盤石なエリートでしたが、狡猾で希代の悪役キャラの部下ワシーリーと捜査の過程で激しく衝突し、それを機に彼の謀略にはまり、直接的には妻をスパイとして摘発しなかった罪で、妻と共に辺鄙な町の民警に飛ばされます。
そして彼はその町で、妻の本音と向き合うことになると同時に、理想の社会主義国家では起こり得ないとされる連続殺人事件の存在に気づきます。
凄い小説です、これ。
イギリスの29才の作家の処女作だそうですが、この全編ひりひりするような、いっときもダレない緊張感がなにより凄いです。
特にしょっぱな。
この小説は1933年の、劣悪な環境と圧倒的飢えに苦しむウクライナから始まるのですが、その章の緊張感たるや。
そこでガツンとやられちゃいます。
小説に癒やしを求める人はそこで百%退散するしかない。
その後に続く1953年の描写も99%は闇です。
一縷の、まさに1%のなにかに向かって物語は進むわけですが。
小説のリアリティって、史実に忠実だとか描写が正確とか登場人物の行動や心理にシンパシー、もしくは説得力がある、なんてことでは全然ないんですね。
もっと、なんていうか、書き手の真剣さというか、姿勢のリアルさにかかっている気がします、私にとっては。
ウエットで抽象的な言い草ですけどね。
それにしても、国って組織は怖いです。
1950年代のソ連に限ったことではもちろんありません。
人は、後ろ盾が大きければ大きいほど自らの思考を止めて残酷になるものですが、宇宙戦争でも勃発して地球防衛軍でも組織しない限り、いつまで経っても人心をこぞって間違わせるという意味では国がその最たるものってことなのでしょうか。
時代や思想に関係なく。
スターリンなんて昔は、その容貌で「岡田真澄に似てる」ぐらいの認識しかなかったわけですが、社会主義の理想国家はかくあるべし、という国家の威信のためにはここまで暴走するものなんだあと、今更ながら震撼しました。
スターリンのいる国や組織は今でもそこここにあるのだろうなあと思うと、まさにブルッと震えます。
後半、特に列車のシーンや犯人との対決の場面も読ませます。
読後、ちょっと疲れましたが。
つけたし。
この小説は恋愛小説でも、家族小説でもあります。
続編が出てます。
読もうっと。
# by kuni19530806 | 2010-02-12 23:37 | 読書