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わたしを離さないで   


カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を読む。

複数の人から「凄い」とか「悲しい」とか「衝撃的」とか「キツイ」とか「ベスト1」「ワースト1」などなど、抽象的過ぎてイメージを掴みにくい感想を聞いていて、でも誰も内容に触れようとしなくて、いったい何が凄いんだか衝撃的なんだかキツイんだか、そもそも甘々なタイトルじゃんねーなどと好奇心に駆られ、気軽に読み始めました。

全く、漏れ聞き及んでいた感想どおりでした。
凄いよ悲しいよ衝撃的だったよヘビー過ぎたよ。

これを正式には何ジャンルと括るのかはわかりませんが、とにかく私にはミステリー小説でした。
介護人とは?
提供とは?
ヘールシャムとは?
特別な生徒達とは?
展示館とは?
マダムとは?
保護官とは?
謎だらけ。

読んでいる最中‥特に中盤までは何度も「もったいぶってんなー」「時系列が交錯し過ぎ」と思った語り口にも終盤はもしかしたら作者の意図以上の意味を感じ、清廉さと不気味さ、絶望と希望、共感と嫌悪、という相対する感慨で本を閉じました。
この読後感は、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』にちょっと似ているかもしれません。
まさに「The end of the world」。

衝撃的な設定の小説ではありますが、基本は心の機微を丹念に縫い上げていく、ような文章の羅列です。
人の気持ちが、ほんのちょっとしたきっかけで一瞬のうちに真逆に変わってしまうさまや、何か驚くべき不本意な事態に陥ったとき、人は往々にして、なすすべもないどころかむしろ積極的に諦めていく‥そのあたりの描写がものすごく巧いです。

読み終わって、しばし、ぼおっとしてしまいました。
じわじわと打ちのめされるような小説でした。
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by kuni19530806 | 2007-06-25 23:17 | 読書 | Trackback | Comments(0)