2012年 09月 29日 ( 1 )   

ガター&スタンプ屋の矜持   

文京区立千石図書館 「豊崎由美講演会 ガター&スタンプ屋の矜持 ~書評の読み方、書き方術~」に行く。

豊崎社長の本は実はさほど読んでいなくて、最新刊『ガタスタ屋の矜持 寄らば斬る!篇』も3分の2ぐらいまでは読んだものの、完読せずじまい。
でも、その中で取り上げられた本にはそそられるモノがいっぱいあった。
川崎徹とかバーバラ・ピムとか。
特にバーバラ・ピムは『秋の四重奏』がとても好きなタイプの小説だったので、今は2冊めを読んでるところです。

豊崎社長の話は面白かった。
本人も「人前で話すのは今月もう5回目」とおっしゃっていたが、本当に話し慣れてる感じで、よどみなく滑舌よく、わかりやすくて、テーマから全くブレずズレず、かといって堅苦しさは全くなく、さりとて無理に笑いを取ろうという不自然さもなく、聞きやすかった。
書評と批評の違いを大八車に喩えての図式化、とか、なるほどなあ、と。

社長曰く、書評は読者の方を向いているべきもので、大八車を後ろから押すポジション。
一方、批評は作家のために書かれるもので、大八車の片方の車輪(もう片方は作家)に該当するそうです。
あ、先頭で車を引っ張るのは出版社と編集者、だそうです。

私はその説に全面的に賛同するわけではない・・っていうか、実際はそうなってはいないよねとかなり懐疑的に思うような人間ですが、世の中の「プロの書評家」と称される人々はそれぞれ自分の仕事に位置づけは必要なのだろうし、社長のその定義はそれなりの説得力があるな、とは思いました。

それと、もちろんまず資質あってのことでしょうが、豊崎社長は、長年のライター生活で「今、自分は何を求められているか」を瞬時に察知し、それを最優先に場を進めていく能力が培われ、研ぎ澄まされている御人、という印象。

ただ、あまりにテーマから逸脱せず、時間配分もぴったりで、参加者からの質問と回答の濃さも程良くて、図書館主催の無料イベントとして瑕疵がなさ過ぎるのがちょっと物足りなかった。
・・・と言ったら、単なる言いがかりになってしまうかなあ。

豊崎社長の講演会は面白かった(しつこい)。
それを前提にして以下を言うわけですが

豊崎社長の言う、書評を書くための努力や書評を書くコツを守ったら、一般人はむしろつまらない書評しか書けない気がした。
書評の役割を「いかに読みたいと思わせるか」と定義するならば、もちろんそこに技術は必要だし、プロと名乗る(もしくは名乗ることが目標)のであれば、最低限のルール、社長の言葉を借りれば「矜持」はあるでしょう。
でも、やっぱり書く人間に面白味というかなにがしかの凸凹した部分が感じられなければ、どんなに完成度の高い書評でも私はピンときません・・というかほぼ、つまらない。

暴言を承知で書くと、私はマジメな人は基本的に大好きですが、書評講座に通って、課題本の書評をちゃんと書き、その批評を素直に受け入れ、次回の自分の書評に活かす・・ような人の書評はあまり読みたいと思わないです。
社長は「ブログで書かれている書評の7割ぐらいは読むに耐えない」とおっしゃっていました。
プロとしてコンスタントに仕事がもらえる書評と、単なる素人の本好きが自分のために趣味で書いている書評が全く別物であるのは当然。
で、今回の講演会は、参加者の実態はどうあれ「書評家を目指す人仕様」という方向性を設定している。
なのでそういう社長のコメントになったのでしょうが、私は、むしろその「依頼もないのに勝手に読んだ本の感想を拙い文章でよけいなことも含めて書き散らす」7割の人にこそ小説の将来の希望があるような気がします、優秀な書評家が誕生して、「読みたい」と思わせる、大八車を力強く後押しするような書評を書いて、それにそそられて本を買う人が増えることより。


帰りは八百コーヒーに行けて良かった。
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by kuni19530806 | 2012-09-29 23:27 | お出かけ