2012年 03月 15日 ( 1 )   

眺望絶佳   

中島京子『眺望絶佳』を読む。
短編集です。
スカイツリーと東京タワーの往復書簡(書簡・・かな)の間に、東京を舞台にしたと思われる短編が8つ入っているという凝った構成です。
短編はどれも、現実と夢のはざまのような、幻惑されて自分をちょっとどっかに持っていかれそうな、それでいてリアルな息遣いが聞こえるかのごとき、摩訶不思議な味わいのあるものばかりです。
いくつかの短編には、ちょっと前に新聞の社会面を賑わせていた事件や話題を彷彿させるものがあったりしますが、その観点で言うと際立っているのは、「亀のギデアと土偶のふとっちょくん」です。
震災の日の東京が描かれています。
そして最後の東京タワーのスカイツリーへの復信。
印象的です、とても。
中島京子さんという、私にとっては稀代の書き手が東京タワーをイタコにして語らせた現在の東京、もしくは作家の心のありようのような気もします。
ちょっと揺さぶられました。

一部引用。
<わたしたちにはなにもすることができません。ただ、でくの坊のように立ち続けているだけです。立つこと以外に、我々にできることはなにもありません。
それでももう一度、あなたに言いたい。
あなたとわたしは立っていなければなりません。
照っても降っても、荒れても凪いでも、常に堂々と立っていなければなりません。それだけがわたしたちにできることであり、立ってさえいれば人々はわたしたちを見上げて安心し、明日を生きる活力を身に蘇らせることができるのです。
いつかわたしたちは不可抗力で、立っていられなくなるかもしれない。それでもその日が来るまでは、わたしたちは立ち続けなければなりません。>

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by kuni19530806 | 2012-03-15 22:24 | 読書