2011年 04月 28日 ( 1 )   

船に乗れ   

藤谷治『船に乗れ』Ⅰ~Ⅲを読む。

なかなか凄い青春音楽小説だという噂は以前から聞いていたのですが、長さにちょっと腰が退けて(長編が苦手ではなく、長編「青春」小説という部分にこっちの迷いが・・)手を出してませんでした。

作者の自伝的要素が濃厚な小説です。
両親は音楽関係者ではないものの、祖父母や伯父伯母が音楽家、という設定は、そのまま作者のものだそうです。
そんな津島サトル少年の高校生活のお話しです。
舞台となる「三流校」の新生学園は洗足学園がモデル。

洗足学園は、私が短大時代、生活の糧を得ていたNEC東京工場(といっても川崎市)の隣にあったんだよね。
よく隣から歌声や楽器の音が漏れ聞こえていたものです。
作者の年齢から察するに、私がちょうどNECの工場で電話交換機の試験という、けっこう麗しい仕事をしていたちょうどその頃、隣で高校生をやっていたみたいだ。
奇遇。

高校の音楽科という、私には全く未知の世界の話はとても興味深く面白く、そして痛々しかったです。
繊細で無神経で、自信家で悲観的、夢見がちでリアリストなサトルは、十代特有と括るにはあまりにヒリヒリした高校生で、恋も友情も、なにより音楽そのものにも加減というものを知らず、傷つく以上に人を傷つけ、音楽に正面から対峙し過ぎた結果、自分の楽器であるチェロさえ続けられなくなります。

も一度書くけれど、本当に痛々しい小説です。
が、明らかな目的があり、希望と挫折がわかりやすく共存する生々しい高校生活が羨ましくもある。
自分にはおよそ無理、とは知りつつ。

解説にもありましたが、これは音楽小説であり哲学小説ですね。
金窪先生の倫理社会の授業の様子とか、どんな哲学書より私にはわかりやすく面白かったです。

サトルは、かつての恋人南(名字です)の言葉通り、いろんなものを壊す過剰でやっかいな人間ですが、その直情さにしばしば心打たれました。
打たれたというより、揺さぶられたかな。

好き嫌いは分かれると思うけれど、力のある小説という意味では一致するのではないだろうか。
本屋大賞7位?
微妙。

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不本意なので詳細は省きますが、今日の読売新聞のローカルページに自分が絡んだ記事が出ました。
残念ながら、犯罪ではありません。
自分の名前と年齢(!)が載りました。
ホント、不本意だわ、あんなことが新聞沙汰なんて!
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by kuni19530806 | 2011-04-28 23:25 | 読書 | Trackback | Comments(0)