2010年 04月 19日 ( 1 )   

真剣師小池重明   

団鬼六著『真剣師小池重明』を読む。
副題は「“新宿の殺し屋”と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯」です。

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この副題、内容の一端というかうわっつらは表していますが、この被評伝者のヒトトナリに関しては、かなり誤解を招く表記。
これだと、ものすごく物騒な、近寄っただけで斬られちゃいそうな張り詰めた人物を想像してしまいそうですが、実際の小池重明はおよそそういう雰囲気ではなかった。
「殺し屋」はあくまでも将棋の強さに対しての呼称ですからね。
ま、アウトローなイメージだけはドンピシャですけど。

それにしても、フィクションでもこういう人物造詣(?)はしないでしょうね。
あまりにベタ過ぎて。

将棋は滅法強いけれど、それ以外は性格&生活破綻者。
でも・・というか、だからこそというか、魅力的で、この本もメチャクチャ面白い。

なにしろ「人妻との駆け落ち3回」だもんなー。
人妻マニアか。
将棋の手法も破天荒で、中盤まではおよそ勝ちそうにない下手を打つのに、終盤になると一気に相手を追い詰め打ち負かすという、素人がいちばんカタルシスを覚えるような戦法だったらしい。
そして、大酒飲みで、ギャンブルにもうつつを抜かし、駆け落ちのたびに、恩ある人を裏切り、金や車までも持ち逃げし、ほとぼりが冷めると詫びを入れ相手の人の善さに甘え、また裏切り、晩年の生活は逼迫し、肉体労働や運転手、寸借詐欺まがいまでし、それでも、どんなブランクがあっても将棋の才能だけは枯渇せず、カタルシス戦法で勝利し、でも無茶な生活と飲酒と色恋沙汰(たぶん)で肝臓をやられて喀血し入院、するものの、脱走を繰り返し、最期は点滴のチューブを引きちぎって44才の自らの命を絶つという、まるで「嘘くさい」人生です。

この前読んだ『天才 勝新太郎』も相当なもんでしたが、この『真剣師小池重明』も相当に相当です。
規格外れの人間は、話を聞く分には滅法面白くて、ものすごく魅力的でかっこいいです。
彼の場合、規格ハズレ、という気もしますけど。
規格はずれのこの人物は、21世紀を見ることなく1992年に亡くなりました。
そうか、現存(!)していたら、60代前半なのか。
その後、何度駆け落ちしてただろう。
そして何度、金の持ち逃げをし、何度、将棋でプロを破っていたんだろうか。

勝新太郎にしろ、小池重明にしろ、規格外で特異な天才を輩出したという事実こそ、20世紀の日本はまだまだ余裕があったってことの証しかも、と思ったりして。
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by kuni19530806 | 2010-04-19 23:10 | 読書