結局、自慢たらたら   

柴田元幸さんトーク&朗読イベント『世界文学を楽しもう VOL.2』 に行く。

私は、トマス・ピンチョンは読んだことがない、雑誌「モンキービジネス」も手にとったことのない、エドワード・ゴーリーの『おぞましい二人』を読んだ夜は悪夢を見た、ような人間なので、柴田元幸さんといっても特にありがたい気持ちはありませんでした。
一時期、ポール・オースターは読んでいたし好きでしたが、特に「LOVE♡」と思っていたわけではなく、実はその訳者が柴田さんと知ったのも最近です。
なので、前のめりに参加したイベントではなかった。
のですが、面白かった。
すごく。

テーマはずばり図書館。
予備知識が全くなくて存じ上げませんでしたが、柴田さんは朗読をやられている方でもあるのですね。
今年亡くなったレイ・ブラッドベリの小品の朗読に始まり、リチャード・ブローティガンの『愛のゆくえ』の冒頭、村上春樹が海外に向けて書いた文章、など、持ち時間の7~8割は朗読でした。
アナウンサー的ではないけれど、程良い抑揚で聞きやすかった。
朗読している人をじっと見ているというのも面白いものです。

朗読以外はほぼ質問タイム。
いかにもお勉強のできそうな質問者が、特にレベルが高いとは思えないふつうの質問をしていました。
それに誠実に回答しようとする柴田さんは、話の端々に知性をこぼしつつ、同時に、子どもみたいなサービス精神と、根っからの翻訳マニアっぷりも発揮していて、まるで英語と日本語の鬱蒼とした森に住む、世事に疎い年齢不詳の浮世離れ人みたいでした。
それにしても、英語を日本語に変換するという行為が純粋にお好きらしい。
それをカミングアウトするとき、照れてニヤニヤしてた。

印象に残ったこと。
翻訳の肝は、ある表現が、一般的なものなのか、レアケースなのかを察知する嗅覚、だそうです。
「もっとも、今はグーグルに入力して何万件もヒットすればよく使われてる言い方なんだとわかったりするんですけど」とのことでした。


それにしても
人選は良かったのに、なんだか主催者の体温があまり感じられなくて残念でした。
もちろん、アツければいいってもんじゃあない。
柴田元幸さんが飄々とした方なので、あれでいいのかもしれない。

けど、講師を選ぶことに一生懸命、決まれば達成感で、あとは「図書館のイベントはこんなもんでいいだろう」でやってる感じっていうの?
2回目なので私の知らない去年の実績があるわけだし、実際は違うのかもしれないけれど、そんな印象を受けてしまった。

自分が法医学者の上野正彦さんを招致したときにも感したことなので自戒を含めて思ったのだけど、「あえてここでやる意味があった?呼んだという事実で満足してないか?」と。
先月、やはり同じ居住区の図書館で大森望さんとトヨザキ社長のトークライブに参加したのだけれど、そのときは「ここでやる意味」云々の邪念は全く浮かばなかったんだよなあ。
その違いはなんなんだろう。

終了後、柴田さんが、参加者が持参した本にサインしたり歓談したりしているのをしばらく眺めていたけれど、図書館を運営する会社の、いかにもな営業マンが二人、やたらへりくだって擦り寄る感じで柴田さんに名刺を渡していて、けっ!と思った。
そもそもの「柴田元幸さんの話を聴きたい」という発案者の気持ちが汚された瞬間を見ちゃった、みたいな。
発案した人の気持ちが純粋だった、とか思ってるわけでもないんだけどね。
全然。

結局、自分の職場の行事と比較してしまうからなのかも。
先日の瞽女唄と越後の昔話は、企画内容も準備も当日の満足度も、本当に素晴らしかったから。
自慢たらたらですが、事実だからしょうがないのだ。
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by kuni19530806 | 2012-12-05 23:26 | その他

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