ノアの羅針盤   

アン・タイラー『ノアの羅針盤』を読む。

久しぶりだ、アン・タイラー。
1990年代はけっこう読んでいたのに、世紀が変わってご無沙汰していました。

面白かった。
さすがだわ、と思いました。

結婚歴2回、娘3人、孫1人を持つ、独り暮らしの60才の男リーアムが主人公です。
リーアムは高校教師の職を突然干されます。
彼はそれに抵抗することなく人生をセミリタイアすることにしますが、生活の基盤を縮小すべく引っ越したその夜に強盗に襲われます。
ケガは大したことがないものの、強盗に遭って格闘までしたらしいのにその記憶が一切ない、そのことが彼をとても混乱させます。
それをきっかけに彼は「記憶」ということについて考え始め、その流れで38才のユーニスという女性と知り合い、娘達や元妻や孫と接することも増え、自分の今までの人生をあらためて考えるようになります。

あらすじはこれだけです。
強盗に襲われたことを別とすればこれといった事件もないし、スーパーマンもとびっきりのハンサムや美女も聖人君子も、誰ひとり登場しません。
老いの入口に1人立たされた、人付き合いが不得手で孤独な男のちょっとした日々が描かれているだけです。

でもすっごく面白いんだよなあ。
地味な日常を平易な言葉を使って綴り、登場人物は特に個性的でもなく、気の利いたことを言わせたりもしないのに、唯一無二の世界を描いている、そんな感じです。

今回は、若い人が読んでも面白くないかもしれない。
若くないからこそ沁みる気がする。
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このところ、「エースをねらえ!」を読み返しています。
もう何回読んだかわからないので、ランダムに取り出している感じですが、今読んでも私には色褪せない世界です。
なりゆきや諦めや思いつきやいい加減さで構成されている計画性のかけらもない私の人生ですが、「エースをねらえ!」に触れると心洗われ、人生にとって大事なことを思い出しそうになります。
うっかり全面的に思い出すとそれはそれで暗い気持ちになりそうなので、この「思い出しそうで思い出さない」(「思い出せない」ではなく「思い出さない」)という微妙な、でもちょっと襟を正したくなるような心持ちのまま、読み続けたいと思っています。

それにしても、真面目だったり責任感が強かったり常識がある人ほど生きづらい世の中ですね。
人は簡単に「肩の力を抜いて」とか「心配してもなるようにしかならないんだから気にするな」とか言いますが、そんなことができるなら苦労しないわけで。

10年後20年後はもちろん、1年後の自分を考えるのも一切止める。
そのかわり、1ヶ月後の自分に「1ヶ月前の自分よ、ありがとう」と言ってもらえるように日々努力してみる、というのはどうでしょう。
どうでしょう、って誰に言ってんだ!?ですが。
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by kuni19530806 | 2011-09-24 22:03 | 読書

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