実験4号   

伊坂幸太郎×山下敦弘『実験4号』を読んで、そして見る。

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これは、伊坂さんの小説「後藤を待ちながら」と、山下さんのDVD「It's a small world」のセット名です。
斎藤和義とのコラボといい、郵便小説といい、企画ものが好きだなあ、伊坂幸太郎。

どちらも舞台は100年後の地球。
火星への移住計画が進み、地球は人が減っている、という設定です。

小説は、火星に行ってしまったロックバンドのギタリスト後藤を、ドラムの門倉とベースの柴田が地球で待つ、という話です。
この時代、ロックという言葉は消滅し、代わってジャカジャカと呼ばれていますが、ロックとジャカジャカは似て非なるもの、なのだそうです。

実在のロックバンドTheピーズの1989年のインタビュー記事が物語の肝になっています。
あ、そもそもこの『実験4号』とは、彼らの曲のタイトルです。

伊坂さんは、このバンド、もしくはこの記事、たぶん両方、に触発されてこの小説を書いたことが明らかです。
確かに、魅力的なコメント満載のインタビューです。
出来すぎなくらいなので、読んでいる最中は、このTheピーズも含めてフィクションかと思いました。
村上春樹の『風の歌を聴け』のデレク・ハートフィールドの例もありますからね。

一方、DVDの方は、門倉と柴田が練習場所にしている、先生と生徒3人と用務員が寝食を共に暮らす小学校が舞台です。
この学校のことは小説の方でも断片的に語られ、シマ子先生や生徒のアビちゃん、シンちゃんの名前も柴田達の口から出てきますが、小説、DVD共通で実際に両方に登場するのは、用務員の小田斬だけです。

この学校の3人の生徒のうち、最年長のアビちゃんも火星に行くことになります。
その「卒業」までの2日間を、やる気のないシマ子先生を軸に描かれます。

シマ子先生役は、ビオレパーフェクトジェルとかのCMに出ていた竹下玲奈さんというモデルさんが演っていますが、気怠くて、何を考えているのかわからない小学校教諭(校長兼務)をけっこう印象的に見せてくれています。
3人の子ども達の演技にも好感が持てます。
特にアビちゃんは、大人になりかけた少年のデリケートさをとても自然に出しているなあ。

そんなこんなですが、小説とDVDの微妙なシンクロっぷりが、たぶん賛否両論だと思う。
せっかくのコラボなのだから、もうちょっと双方を絡ませた方がいいのに、と思う人も多いはず。
でも私は、このそっけないシンクロがけっこう好みです。
その分、想像力を喚起させられるから。

とはいえ、このオシャレ(?)な企画そのものを麗しいと思ったかというと、それはまた別です。
やっぱり、どっちも物足りません。
それは質的ではなく量的に。
小説の枚数と、DVDの時間数(40分)が物足りず、これで2800円は高いなあという感じ。

図書館では、このセットのDVD部分は許諾がとれず小説だけが貸し出されているようです。
今、検索したところ、我が居住区では1つの図書館だけがこれを購入してました。
そしてそこに現時点で21人の予約者が並んでいます。
既に発売されて2年ですから、これでも予約は減っているのでしょうが、並んでいる人々は、これがセット販売の片割れだと知ってるのだろうか、気にかかったりします。

最後に、このセットは箱入りですが、この箱の装丁はすごく好きです。
特に色味。
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by kuni19530806 | 2010-10-09 13:57 | 読書 | Trackback | Comments(0)

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