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砂漠   

伊坂幸太郎の『砂漠』を読む。

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このところ、読書における伊坂頻度が高いのは、彼の小説が全て家にあるからです。

『バイバイ、ブラックバード』は面白かったけれど、『SOSの猿』に乗り切れず、『魔王』に至っちゃ途中で挫折した身としては、『砂漠』もあまり期待せずに読み始めました。
表紙もなんだか暗いしね。
青空が明るく感じられない写真って新鮮だ。
ちなみに私が読んだのは文庫ではなく単行本ですが、単行本には表紙が2パターンあるみたいです。
家にあるのは上。
もう1つは顔のアップのイラスト(漫画)で、この評判は今ひとつだったらしいので、増刷で上のパターンに変わったのかもしれません。

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仙台の国立大学に入学した岩手出身の北村が主人公。
北村を一目で俯瞰型」と見破ったやませみヘアーの鳥井、その鳥井と中学で同級生だった超能力少女の南ちゃん、美人で無愛想な東堂、そして、サンボマスターのボーカルのようにうっとうしい西嶋、が主な登場人物です。
彼らは、西嶋の「東西南北で麻雀」という陳腐な(伊坂幸太郎さんは「陳腐」って言葉が好きですよね)謀略で知り合い(鳥井は場所の提供者)、伊坂幸太郎的日常や僥倖や苦難と向き合いつつ、大学生活を過ごします。

私は、大学生がツルんでどーのこーのという話があまり好きではありません。
自分が学生の頃から大学生ってもんが好きじゃなかった。
特に団体行動をしている大学生が苦手。
「あすなろ白書」とか、「オレンジディズ」とか、私にはちょっと気持ち悪い世界です。

今でも、都営のテニスコートあたりでテニスをすると、よく隣のコートで大学生のサークルがやっていますが、たとえちゃらちゃらした練習風景じゃなくても、むしろそれならそれで、なんだか「けっ!」と思っちゃう。
自分でも「過剰反応じゃね?」と思うくらいです。
もしかしたら私、そういう大学生活に憧れていたのに実現しなかったからやっかんでるんでしょーか、とか。
でもなんか、つまらなそうなんだよね、団体行動してる大学生って。
自分を面白いと思ってそうなヤツが特に。

そんなわけで、大学生の話にはそそられないのですが、この『砂漠』はけっこう面白かったです。
やっぱ、西嶋君の威力でしょうかね。
魅力っていうより威力だ。

世界を憂い、どんな状況でも持論を曲げない、みっともなくて空気が読めなくて幼稚で、でも「涯(は)てがない」西嶋。
こんなヤツが近くにいたら本当にうっとうしくて不愉快だろうなと思いつつ、どんどん憎めない存在になっていきます。

それと、これを読んだら、伊坂さんが森達也さんのファンだというのがとてもよくわかりました。
っていうか、森達也の『スプーン』に触発されてこれを書いたような気がしました。

あとは、伊坂さんの小説に出てくる女性はみんな賢いですが、南も東堂も、北村君の彼女の鳩麦さんもこぞって賢い。
作者の理想なんでしょーねえ。

鳩麦さんと東堂さんの会話に
鳩「東堂という名字だから、ものすごく記憶力が良かったりして?」
東「ええ。『忘れました』とは絶対に言いません」

というのがありますが、気になってついネットで検索しちゃいました。
大西巨人の長編小説が出典でした。

そんなこんなが、私の「大学生小説は苦手」という意識をかなり浄化(?)してくれたような気がします。

by kuni19530806 | 2010-09-02 23:31 | 読書

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